水はヤバい
12月も半分を過ぎて、段々と年の瀬の雰囲気が辺りに漂うようになってきた。
こないだ、と言っても1ヶ月以上前の話だが、駅の近くにある定食屋へ行った。その定食屋は小さな雑居ビルの二階にあり、一階には某家系ラーメンチェーンが入っている。リーズナブルな価格となかなかのボリューム、おばちゃん数人でせっせと働いている様が主に学生達に支持されている。
頻度こそ高くないが、私も2ヶ月に1度くらい利用する。個人的に豚キムチ定食(大体そんな名前)がおいしくて好きだ。また付け合わせによく分からないパサパサのナポリタンみたいなのが付いてくるのだが、それはよく分からない。また別の話だ。
ここで話を畳んでしまうと定食屋さんについての情報量の足りない紹介で終わるのだが、本題はここではない。
この定食屋の水はセルフサービスなのだが、ここでは何故か店の水を飲むことをやたらと薦められる。いや、直接店員に言われたりするわけでは無い。店の至る所に店で提供される水についての宣伝文句がラミネート加工されて貼ってあるのだ。
詳しくは、こんな感じの文言。
「〇〇(店名)の水をたくさん飲んでください」
「〇〇の水を3杯飲んだドロドロ血液の人の20分後の写真です」
「キューバの医療でも使われています」
飲食店にこんなこと書いてあったらビビらないか?とりあえずとにかく、この店で出される水はすごい。らしい。飲むと血液がサラサラになる(らしい)。先程チラッと述べた写真には、血球「らしき」粒が沢山くっついた写真と、それらが離れ全体に広がっている様子が写っていた。血液がサラサラになったという説明だろう。ここでいらぬ親切心を働かせて自作のイメージ図を描いてみたので見てもらいたい。
ドロドロの方。藻みたいだ。
そしてこちらがサラサラの方。
また「キューバの医療にも使われてる」とのこと。具体的には「ワクチン、ホメオパシー治療などに利用されている」らしい。水が?????
なんでもこの水、ある科学者が考え出した「調和度の高い水」なんだという。どういう訳なのか分からないが、この水の考案者は病気になっている現代の人間・自然・地球までもを浄化する計画を立てているらしい。壮大すぎて全体を呑み込めない(水だけにね)。
店の外に貼ってあった張り紙。地球は病にかかっているらしい。またこの他にもこの水の考案者が「お母さん」と呼ばれる上位存在から天啓を受けた話や、自然を浄化する計画の詳細が書かれた紙も配布目的で置いてあった。すごくないか?
ここまで書いて思ったことだが、何故水はスピリチュアルな要素が付加されやすいんだろうか。インターネットで少し調べてみると、色々な能力を秘めたありがたい水の宣伝サイトが見つかる。一番笑ったのは、干からびた金魚を水に浸すと、元どおりになる、というもの。生命を与えてしまうのか……。
やはり、水が人はもちろん、他の動物や植物の生命を繋ぐ必要不可欠な存在だからだろうか。少なくとも人はその程度の差はあれ、水に対してありがたみを持っている。その畏敬の念が特別な効果を持つ(ように見えるだけのことが多いが)水を生むのかもしれない。
さて、肝心の実際に水を飲んでみた感想だが、普通においしい水だった。しかし、特に何か特別な効果を実感したりはしなかった。そもそも、血液がドロドロになる一要因として水分不足があるので、これは特別な力でも何でもないのでは……
話が纏まらない。他にも色々と書きたいことがあるが、風呂敷を広げすぎてしまう気がするのでここで終わりにしよう。特に何かを糾弾したいわけでもなく、ここのお店の水、なんかすごいぞということを言いたかった。
ただし実際にこの水の効果に科学的裏付けがあるかと言われると、答えはノーになるだろう。認知度の低さ、学術的な支持を受けていないことから分かるように、これはインターネット等で散見される「疑似科学」の域を出ていない。最近、国民生活センターの調査を受け「ただの水」と斬り捨てられた水素水も、これに似ている。わりとホットな話題なのでは。というか、なぜ水素水はヒットしたんだろうか?気になるので知っている人は教えて欲しい。
いつか、財布に余裕があったらスピリチュアルな水を買って飲んでみたいなと思う。そのいつかはしばらく来なそうだが。